令和4年11月22日,第19回日弁連高齢者・障害者権利擁護の集いが開催されました。
2023年04月18日
テーマは,「大災害・コロナ禍を経験した今だからこそ改めて考える“インクルーシブ社会”の実現」です。
基本資料集が作成され参加者に配布されましたが,当事務所の代表弁護士である中山修身弁護士が中心となり,様々な文献調査はもとより,35年以上の弁護士経験に基づき,いわば集大成としてこの資料集を作成しました。そして,ベテランの社会福祉士,施設関係者や当事者,近親者等にヒアリングした内容も掲載しています。
「はしがき」と目次を掲載します。また,第1部~8部の大半は,中山弁護士が,責任者である周南市の通山和史弁護士の厳しい校正を経て執筆しました。
今後は,当事務所が主催した講演等もの要旨も随時掲載していく予定です。
令和2年初から、新型コロナウイルスの大流行が続き、一向に終息する気配もない。令和3年8月ころには、ようやく「災害と同じではないか」、という論調が新聞などに現れるようになった。令和3年末には、一旦、感染が治まったように見えたが、同時期頃から「オミクロン株」が世界的に蔓延するようになり、「集い」開催時期にもコロナ禍がどうなっているかは見通せない。そして、地震や台風・豪雨といった風水による災害も止むことがない。双方とも、人による都市化、産業化の拡がりに原因がありそうだが、この「集い」は、それを問うのではない。
今般の「集い」が、テーマとする「インクルーシブソサイエティ」ないし「地域共生社会」という理念から捉えると浮かび上がる、孤立し、または、隔離されている障害者や高齢者に対するこれまでの制度の弱点・問題点をどのように改良していけるか、また、パンデミック・災害などの非常事態下に生じる「孤立・隔離・差別等」にどう対処できるかを考えようとするものである。「インクルーシブソサイエティ」は、障害者の権利に関する条約に示されたが、平成23年、この条約の国内法化のため、障害者基本法の大改正にあたり、「地域共生社会」という理念を立法化した。他方、高齢者に関する福祉法制においては、「包括地域ケア」を構築しようとしていたが、令和2年に、社会福祉法等を改正して、「地域共生社会」を法制化した。インクルーシブソサイエティと地域共生社会の二つが同一の理念かの検討は必要である。
災害については、神戸や東北の大震災等において、「危機管理」の能力不足が問われ、それを立法事実とする法改正を含む多くの対策、ノウハウが積み上げられた。他方、世界的パンデミックは、非日常の日常化といえ、「経済、社会、文化への長期に及ぶ深刻な打撃であり、さらに“平時”ならば可視化されなかったような経済的貧困や社会的差別が一気に表面化する」のである(日経令和3年8月7日、進化学者三中信宏の「パンデミックの世紀」への書評)。これは、孤立や隔離の一つのマイナス事象の表れである虐待が増加していることや、様々な相談が渦巻く社協での貸付業務のパンク状態などに窺える。このような事態において、「インクルーシブ」「共生」を目指すには、如何せんと考える前提としては、「平時」にあった諸問題を確認することになろう。また、このような事態の究極には、令和4年2月からのウクライナのような戦時における「国民保護」の課題がある。
ところで、(一社)宮城県社会福祉士会は、「2011年3月11日 東日本大震災時の後見活動からの振り返り」の「おわりに」で、次のように括っている。
「平時の課題は、有事にはもっと大きな課題になり表面化されやすい。」
「平時に行えないことは、非常時はもっとできない。」
「想定外から想定内へ。」
今日ここに「集う」、日々、ケースの解決を担っている我々弁護士、福祉、医療の専門職や行政職という「担い手」は、どうしても認知症高齢者への、また、三分野に分かれた障害者への、これまでの、いわば対象類型ごとの法や制度を運用しているが故に、それに拘束されている。その壁を取り壊すとしても、例えば、「脱施設」をスローガンとするにしても、少なくとも、敗戦後の法制、政策の変化やその動因を踏まえておく必要はあるし、いわば分野別のそれらが異時的に進行していることとその原因を理解しなければならない。上記「振り返り」は、「おわり」の前で、「あってよかった介護保険制度」として、平成23年当時の障害者施設におけるケアマネの仕組が不足していたと振り返っている。高齢者も認知障害のパターンにより、精神障害に類似したり、障害者の高齢化という課題がある訳であるから、障害者を主テーマにするにしても、高齢者のことを忘れることはできず、そこに「壁」を作れないのである。
テーマとする「インクルーシブ・ソサイエティ」ないし「地域共生社会」は、ある論者が述べるように、「社会の統治戦略とかかわっている」のであれば、少なくとも、立法をふまえた各種活動・計画(地域福祉計画含む)の中で、実現を目指していくことになる。その意味で、参加いただく医療・福祉に携わられる方々や行政職・社協職員の皆さんには、そのような立場を一層自覚していただく必要があるし、ケースワーカーである法律職・福祉・医療職は、少なくとも、包摂を阻害している社会的排除にあたる現実を各々のテクニックで解消していく役割が自覚されるべきであろう。
ところで、令和4年10月3日の第210回国会開会における岸田総理大臣の所信表明演説は、「3 新型コロナ・災害対策」の中で、【包摂社会の実現】を、次のように述べた。
「新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方もない方も、全ての人が生きがいを感じられる多様性のある社会です。全世代型社会保障の構築を進め、少子化対策、子育て・子ども世代への支援を強化するとともに、女性活躍、孤独・孤立対策など包摂社会の実現に取り組みます。」
これは、やはり、「社会の統治戦略」というほかないだろう。実務家としては、それが一人一人に、どう効果を与えるか、を見極めることになる。
(参加者の皆さんへ)
執筆した法律職は、「現場」やそこをコントロールする法令(様々な課長通知等含む)を知っていないといえる。そのため、福祉・医療職からすると、誤りや実情に合致しない記述も多い筈である。遠慮無く、今後指摘されたい。
逆に、法律・行政職からみると、「くどい」法律の解説になっているかもしれない。これは、福祉・医療職の人々に、「法的解釈等は、こういうものだ」ということを感じてもらいたいからである。その上、執筆者にとっても、馴染みのない法令ばかりだし、それ故、学者・弁護士らの文献を引用する部分が大半であり、改正のサイクルが早いのでフォローが完全でないといえる。「誤り」や別の見解があれば、これまた、指摘されたい。
なお、障害児については、力不足で言及できない。又、参照すべき文献・雑誌は、あまりにも多いため、執筆者の知る範囲のものに留まっている。
(構成についての説明)
「集い」のテーマ「大災害、コロナ禍を経験した今だからこそ、改めて考える『インクルーシブ社会』の実現」から、インクルーシブ概念の検討をし(第1部)、(主に)重度知的障害者への「地域への支援」についての基調報告を受け、パネルディスカッションされるので、「トポス」という概念をつかって大づかみの整理をする(第2部)。この二つで、「施設から地域」へというスローガンを考えるベースを作り、それを支える「担い手」を第4部で扱う。
本「集い」では、災害やコロナ禍という緊急事態における課題を、具体的に考えるのが、もう一つの柱である。そこで、緊急事態の総論を第3部でおこなうが、その「担い手」(第4部)も当然関連する。
以上をふまえて、知的障害者の生活については、第5部で、制度の沿革を復習して、第6部で具体的な支援の諸課題を扱う。この二つの部が、言わば、「平時」の整理なので、第7部では災害時、第8部ではコロナ禍でという、緊急事態時の支え方を考えていくものである。第9部は、政策提言や、刑事手続を含む弁護士会の取り組みについて、報告する。
(各部のサマリー)
第1部:インクルーシブ概念の周知度アンケートのほか、権利条約からの沿革、共生社会や地域共生社会概念、孤立といった類似概念との関係
第2部:トポスという概念をつかって、「身近な地域」や「施設」を考えてみたうえで、いわゆる本人と支援者の場所的関係性を整理
第3部:緊急事態を分説し、対応する法制度の相互関係にふれつつ、インクルーシブ理念により、どう制御できるか検討
第4部:「担い手」について、親子関係、意思決定(支援)等を踏まえ、一般的に検討したうえで、「集い」パネルディスカッションにおける知的障害者の人々への支援をする人々の取り組みを僅かであるが記述し、特に、災害やコロナ禍での支援を担う者について、広くあげて考察
第5部:本「集い」のメーンテーマの知的障害者の人々への支援するための法律制度の沿革を説明
第6部:第5部をうけて、具体的に生活支援を検討。そのため、4人のベテランの人々へのインタビューを行い、市町の障害者基本計画等の本人に近い人からの施設との関係などのアンケートを検討
第7部:災害時における要支援者等にかかわる法制の概説をし、特に、個別支援計画について検討をした。その際、山口市宮野地区の取組を紹介
第8部:コロナ禍における困難な論点について、アンケートを踏まえて整理
第9部:第1部から第8部までの補足
(サマリーの要約)
概念(インクルーシブや地域共生)はさておき、日々ケースを担当する実務家としては、本「集い」におけるキーワードは、(結局、いつもの)次のようなものになることが自覚される。平時と緊急事態に分けても、基本は同じである。
①ご本人と親族らとの関係性(ご本人の判断能力や経歴・特性の見極め)、②様々なセンシティブ(要配慮)情報の入手、利用、提供という、その正確性、利用可能性への判定を含む「情報」、③支援(相談/インテーク/サービス)の選択、④③に先立つ、ご本人の意思決定とその支援(代行)、⑤これらの手順において、他の専門職との連携をし(情報は共有)、包括的支援。そして、⑤については、緊急事態において、「個別支援計画」及び「クライシスプラン」づくり等である。⑤も介護プラン等と基本的に同じで、①~④のプロセスで作られることに違いはないと思料する。
組織からみると、BCPという意味で一般化できる計画を立て、訓練し、適宜改訂していき、実際に発生した場合は、クライシスプランとして作り替えることになる。これが、ケースワークを踏まえた組織におけるガバナンスということになる。
基本資料集が作成され参加者に配布されましたが,当事務所の代表弁護士である中山修身弁護士が中心となり,様々な文献調査はもとより,35年以上の弁護士経験に基づき,いわば集大成としてこの資料集を作成しました。そして,ベテランの社会福祉士,施設関係者や当事者,近親者等にヒアリングした内容も掲載しています。
「はしがき」と目次を掲載します。また,第1部~8部の大半は,中山弁護士が,責任者である周南市の通山和史弁護士の厳しい校正を経て執筆しました。
今後は,当事務所が主催した講演等もの要旨も随時掲載していく予定です。
はしがき
執筆者代表
弁護士 中山修身
令和2年初から、新型コロナウイルスの大流行が続き、一向に終息する気配もない。令和3年8月ころには、ようやく「災害と同じではないか」、という論調が新聞などに現れるようになった。令和3年末には、一旦、感染が治まったように見えたが、同時期頃から「オミクロン株」が世界的に蔓延するようになり、「集い」開催時期にもコロナ禍がどうなっているかは見通せない。そして、地震や台風・豪雨といった風水による災害も止むことがない。双方とも、人による都市化、産業化の拡がりに原因がありそうだが、この「集い」は、それを問うのではない。
今般の「集い」が、テーマとする「インクルーシブソサイエティ」ないし「地域共生社会」という理念から捉えると浮かび上がる、孤立し、または、隔離されている障害者や高齢者に対するこれまでの制度の弱点・問題点をどのように改良していけるか、また、パンデミック・災害などの非常事態下に生じる「孤立・隔離・差別等」にどう対処できるかを考えようとするものである。「インクルーシブソサイエティ」は、障害者の権利に関する条約に示されたが、平成23年、この条約の国内法化のため、障害者基本法の大改正にあたり、「地域共生社会」という理念を立法化した。他方、高齢者に関する福祉法制においては、「包括地域ケア」を構築しようとしていたが、令和2年に、社会福祉法等を改正して、「地域共生社会」を法制化した。インクルーシブソサイエティと地域共生社会の二つが同一の理念かの検討は必要である。
災害については、神戸や東北の大震災等において、「危機管理」の能力不足が問われ、それを立法事実とする法改正を含む多くの対策、ノウハウが積み上げられた。他方、世界的パンデミックは、非日常の日常化といえ、「経済、社会、文化への長期に及ぶ深刻な打撃であり、さらに“平時”ならば可視化されなかったような経済的貧困や社会的差別が一気に表面化する」のである(日経令和3年8月7日、進化学者三中信宏の「パンデミックの世紀」への書評)。これは、孤立や隔離の一つのマイナス事象の表れである虐待が増加していることや、様々な相談が渦巻く社協での貸付業務のパンク状態などに窺える。このような事態において、「インクルーシブ」「共生」を目指すには、如何せんと考える前提としては、「平時」にあった諸問題を確認することになろう。また、このような事態の究極には、令和4年2月からのウクライナのような戦時における「国民保護」の課題がある。
ところで、(一社)宮城県社会福祉士会は、「2011年3月11日 東日本大震災時の後見活動からの振り返り」の「おわりに」で、次のように括っている。
「平時の課題は、有事にはもっと大きな課題になり表面化されやすい。」
「平時に行えないことは、非常時はもっとできない。」
「想定外から想定内へ。」
今日ここに「集う」、日々、ケースの解決を担っている我々弁護士、福祉、医療の専門職や行政職という「担い手」は、どうしても認知症高齢者への、また、三分野に分かれた障害者への、これまでの、いわば対象類型ごとの法や制度を運用しているが故に、それに拘束されている。その壁を取り壊すとしても、例えば、「脱施設」をスローガンとするにしても、少なくとも、敗戦後の法制、政策の変化やその動因を踏まえておく必要はあるし、いわば分野別のそれらが異時的に進行していることとその原因を理解しなければならない。上記「振り返り」は、「おわり」の前で、「あってよかった介護保険制度」として、平成23年当時の障害者施設におけるケアマネの仕組が不足していたと振り返っている。高齢者も認知障害のパターンにより、精神障害に類似したり、障害者の高齢化という課題がある訳であるから、障害者を主テーマにするにしても、高齢者のことを忘れることはできず、そこに「壁」を作れないのである。
テーマとする「インクルーシブ・ソサイエティ」ないし「地域共生社会」は、ある論者が述べるように、「社会の統治戦略とかかわっている」のであれば、少なくとも、立法をふまえた各種活動・計画(地域福祉計画含む)の中で、実現を目指していくことになる。その意味で、参加いただく医療・福祉に携わられる方々や行政職・社協職員の皆さんには、そのような立場を一層自覚していただく必要があるし、ケースワーカーである法律職・福祉・医療職は、少なくとも、包摂を阻害している社会的排除にあたる現実を各々のテクニックで解消していく役割が自覚されるべきであろう。
ところで、令和4年10月3日の第210回国会開会における岸田総理大臣の所信表明演説は、「3 新型コロナ・災害対策」の中で、【包摂社会の実現】を、次のように述べた。
「新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方もない方も、全ての人が生きがいを感じられる多様性のある社会です。全世代型社会保障の構築を進め、少子化対策、子育て・子ども世代への支援を強化するとともに、女性活躍、孤独・孤立対策など包摂社会の実現に取り組みます。」
これは、やはり、「社会の統治戦略」というほかないだろう。実務家としては、それが一人一人に、どう効果を与えるか、を見極めることになる。
(参加者の皆さんへ)
執筆した法律職は、「現場」やそこをコントロールする法令(様々な課長通知等含む)を知っていないといえる。そのため、福祉・医療職からすると、誤りや実情に合致しない記述も多い筈である。遠慮無く、今後指摘されたい。
逆に、法律・行政職からみると、「くどい」法律の解説になっているかもしれない。これは、福祉・医療職の人々に、「法的解釈等は、こういうものだ」ということを感じてもらいたいからである。その上、執筆者にとっても、馴染みのない法令ばかりだし、それ故、学者・弁護士らの文献を引用する部分が大半であり、改正のサイクルが早いのでフォローが完全でないといえる。「誤り」や別の見解があれば、これまた、指摘されたい。
なお、障害児については、力不足で言及できない。又、参照すべき文献・雑誌は、あまりにも多いため、執筆者の知る範囲のものに留まっている。
(構成についての説明)
「集い」のテーマ「大災害、コロナ禍を経験した今だからこそ、改めて考える『インクルーシブ社会』の実現」から、インクルーシブ概念の検討をし(第1部)、(主に)重度知的障害者への「地域への支援」についての基調報告を受け、パネルディスカッションされるので、「トポス」という概念をつかって大づかみの整理をする(第2部)。この二つで、「施設から地域」へというスローガンを考えるベースを作り、それを支える「担い手」を第4部で扱う。
本「集い」では、災害やコロナ禍という緊急事態における課題を、具体的に考えるのが、もう一つの柱である。そこで、緊急事態の総論を第3部でおこなうが、その「担い手」(第4部)も当然関連する。
以上をふまえて、知的障害者の生活については、第5部で、制度の沿革を復習して、第6部で具体的な支援の諸課題を扱う。この二つの部が、言わば、「平時」の整理なので、第7部では災害時、第8部ではコロナ禍でという、緊急事態時の支え方を考えていくものである。第9部は、政策提言や、刑事手続を含む弁護士会の取り組みについて、報告する。
(各部のサマリー)
第1部:インクルーシブ概念の周知度アンケートのほか、権利条約からの沿革、共生社会や地域共生社会概念、孤立といった類似概念との関係
第2部:トポスという概念をつかって、「身近な地域」や「施設」を考えてみたうえで、いわゆる本人と支援者の場所的関係性を整理
第3部:緊急事態を分説し、対応する法制度の相互関係にふれつつ、インクルーシブ理念により、どう制御できるか検討
第4部:「担い手」について、親子関係、意思決定(支援)等を踏まえ、一般的に検討したうえで、「集い」パネルディスカッションにおける知的障害者の人々への支援をする人々の取り組みを僅かであるが記述し、特に、災害やコロナ禍での支援を担う者について、広くあげて考察
第5部:本「集い」のメーンテーマの知的障害者の人々への支援するための法律制度の沿革を説明
第6部:第5部をうけて、具体的に生活支援を検討。そのため、4人のベテランの人々へのインタビューを行い、市町の障害者基本計画等の本人に近い人からの施設との関係などのアンケートを検討
第7部:災害時における要支援者等にかかわる法制の概説をし、特に、個別支援計画について検討をした。その際、山口市宮野地区の取組を紹介
第8部:コロナ禍における困難な論点について、アンケートを踏まえて整理
第9部:第1部から第8部までの補足
(サマリーの要約)
概念(インクルーシブや地域共生)はさておき、日々ケースを担当する実務家としては、本「集い」におけるキーワードは、(結局、いつもの)次のようなものになることが自覚される。平時と緊急事態に分けても、基本は同じである。
①ご本人と親族らとの関係性(ご本人の判断能力や経歴・特性の見極め)、②様々なセンシティブ(要配慮)情報の入手、利用、提供という、その正確性、利用可能性への判定を含む「情報」、③支援(相談/インテーク/サービス)の選択、④③に先立つ、ご本人の意思決定とその支援(代行)、⑤これらの手順において、他の専門職との連携をし(情報は共有)、包括的支援。そして、⑤については、緊急事態において、「個別支援計画」及び「クライシスプラン」づくり等である。⑤も介護プラン等と基本的に同じで、①~④のプロセスで作られることに違いはないと思料する。
組織からみると、BCPという意味で一般化できる計画を立て、訓練し、適宜改訂していき、実際に発生した場合は、クライシスプランとして作り替えることになる。これが、ケースワークを踏まえた組織におけるガバナンスということになる。
基調報告書目次 |
はしがき |
第1部 インクルーシブとは |
第1 論点の確認 |
第2 このような概念の位置づけ |
第3 インクルーシブ(社会)とは |
第4 インクルーシブとの類似ないし構成要素となる概念 |
第5 広がる対象 |
第2部 共生・インクルーシブ社会におけるトポス |
第1 トポスの意義と共生(インクルーシブ)社会における位置付け(総論) |
第2 福祉系の実定法にいう「地域社会」や「身近な場所」とは、何を指すのか |
第3 A「面会禁止や制限等について」+B「どこで生活するのか、しているのか」 |
第4 「平時」におけるトポスの改善・改良への取組み |
第5 知的障害者の生活…「道草」を参考に… |
第6 認知症高齢者の生活 |
第7 地域移行と地域で生きること |
第3部 緊急事態…平時との異同、インクルーシブ理念による制御… |
第1 緊急事態におけるインクルーシブ社会実現のための制度 |
第2 緊急事態とは |
第3 緊急事態三法と「インクルーシブ」・「地域共生」 |
第4 緊急事態に関する法令等の整理 |
第5 対象事態の進展における高齢者・障害者と担い手のかかわり |
第6 緊急事態下における意思決定支援と情報 |
第7 緊急事態におけるインクルーシブの弱体化ないし論点 |
第4部 担い手 |
第1 インクルーシブ社会・地域共生社会に向けての担い手を「さがす」 |
第2 家族やキーパーソンといった概念 |
第3 意思決定とその支援 |
第4 「担い手」の育成及び供給量 |
第5 様々な担い手 |
第6 担い手としての地域包括支援センター等 |
第7 弁護士ないし弁護士会の取り組み |
第8 (緊急事態における)仕組の担い手 |
第5部 知的障害者への福祉制度の沿革 |
第1 論点 |
第2 沿革 |
第3 身体・精神障害対応の福祉制度との歴史的違い…手帳制導入から見る… |
第4 戦後福祉サービス等政策(ないし支援方法)の展開と「施設」の位置付け |
第5 障害者基本法制定に向けた動向 |
第6 サービスと手帳 |
第7 施設福祉の功罪 |
第6部 知的障害者の具体的生活と支え方 |
第1 知的障害者の現状 |
第2 文献等にあらわれる生活 |
第3 山口県内市町作成の障害福祉計画における当事者らへのアンケート項目から |
第4 自立支援アンケートから |
第5 障害者へのサービス提供者への質問お尋ねとインタビューの報告 |
第6 ある(重度の)知的障害の人に関する報告 |
第7 障害者の地域移行について |
第8 障害者への支援 |
第9 高齢者への支援との比較(一例) |
第10 虐待の防止について |
第11 法律職は、彼、彼女を知っているか? |
第7部 災害における要配慮者と支援の仕組み |
第1 総論 |
第2 東日本大震災を契機とする災害対策基本法等の改正…避難の基本法制として… |
第3 要配慮者等に対する支援過程や組織の概要 |
第4 災害想定情報とその伝達(ハザードマップ等とその問題点) |
第5 災害時における避難所の諸問題 |
第6 令和4年7月20日のインタビュー(ふしの学園における実践例から) |
第7 日弁連の過去の取組みの回顧を含めて |
第8部 感染症(コロナ)禍と要配慮者 |
第1 新型コロナウイルス禍の推移 |
第2 法令の整理 |
第3 何が障害者サービス(支援)に生じたか |
第4 コロナに福祉職等の担い手はどう対処しているか |
第5 面会制限について…意思決定論をふまえて |
第6 コロナ禍における情報 |
第7 新型コロナウイルス(感染症)の広がり…インクルーシブに向けて… |
第8 コロナ禍における偏見・差別、DV、プライバシー |
第9部 補足 |
第1 ヤングケアラー |
第2 触法障害者(入口・出口支援) |
第3 「おひとりさま」と「ホームロイヤーのすすめ」 |
第4 脱施設・脱病院・脱隔離 |
第5 障害者の施設入所・退所の仕組 |
第6 虐待防止法による措置(分離)の仕組 |
罪に問われた人の社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン) |
以 上